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スロベニアの地理⑦: パンノニア地方

パンノニア地方 とうとう最後の地域、パンノニア地方をテーマにお送りします。パンノニア地域は、スロベニアの北東部になります。前はカルパチア盆地があった場所で、この地域も二つ、平らな部分と山がちな部分とに分けられます。下の地図の茶色い部分が山がちな地域で、黄色い場所が平らな地域になります。 photo1 気候 パンノニア地方の気候は穏やかな、大陸性気候です。つまり冬は寒く夏が暑い気候です。スロベニアの中では最も降水量が少ない地域でもあります。嵐や氷の雨が降ることから、一番降雨水量が多いのは夏です。 落葉樹林の森 平らな部分では落葉樹林の森があるのですが、縮小しているという現実があります。理由は土地がとっても肥沃なので、畑や牧草地にされたということです。日当たりがいい山がちな部分にワイン畑があります。 三つの川 パンノニア地方には、大きな川が三つも流れています。それぞれ ムラ、ドラヴァ 、そして サヴァ川 と言います。ドラヴァ川には二つの大きな水力発電所があります。 photo2ムラ川の粉挽き機。水の力を利用して小麦を引いているんですよ。 産業 パンノニア地方の南西部には鉄道が走っています。そこを通ってオーストリアやハンガリーへと行けるのですが、その地域の街、マリボルやツェリエは早くに発達しました。戦後、農業地であったムルスカソボタやプトゥイも産業が発達していきました。 しかし他の地域では今でも農業が中心です。理由としては交通の利便性が低いことが挙げられます。今では過疎化が進んでいる状態です。特にスロベニアの北東部はこの現象が顕著に表れています。仕事がないために、(農業以外に)オーストリアやドイツへ働きにいく人がいます。ただこの地域には新しい家が多いため、スロベニアで最も経済が発展していない地域にもかかわらず、そういった印象を持つ人は少ないんです。 本当に肥沃な土があるので農業には最適な土地です。野菜やワインが美味しく育っています。 サービス業も近年は発達している分野です。というのも、パンノンスカ地方は、スパ(日本でいうと温泉)で有名なところなんです。ユーゴスラビアから独立した後、ハンガリーとの交通が発展しました。レンダヴァやマリボルの間が発展し、ハンガリーまたオーストリアの

スロベニアの地理⑥ プレアルプス地方 Predalpski svet

 プレアルプス地方  アルプス地方に続く地域、プレアルプス地方。自然はアルプス地方に似ていますが、”社会”を見てみると結構違いがあります。海面から低く、傾斜が少ない土地で大体は平らな地表があり、気候も穏やかなため移住地として、そして産業地としてもポテンシャルが高い地域と言えます。 基本的に プレアルプス山岳地方(Predalpska hribovja) と リュブリャナ盆地(流域)(Ljubljanska kotlina) の二つに分けられます。 プレアルプス地方はユリアンアルプスの南部から始まり、なんとイタリアの国境まで細長く伸びています。中部、東部と伸び、そこから北へとオーストリアの国境まで広がっています。したがって、プレアルプス山岳地方は細かくいうと、3つに分けられます。中部に入っているのが、リュブリャナ盆地となっています。 プレアルプス地方はアルプス地方よりも地質学がふんだんに盛り込まれています。山には石灰岩の他に、不浸透性の堆積物、火山岩、変成岩、流域の底には川の堆積物でいっぱいです。海抜が低いのでそこまで気温差などは激しくなく、 中度の大陸性気候 です。しかし、西部はアドリア海の影響を受け、北東部は高山性気候の影響を受ける傾向が強いです。 リュブリャナ盆地または山岳地方は人口が多く、気温が変わりやすいです。またこの地域は産業が一番スロベニアで密集しているので、空気の汚染率も高いです。 プレアルプス地方の地表や気候環境は、植物の生育にも合っています。プレアルプス地方の山々はスロベニアで最も森林に覆われた土地なのですが、その頭頂部は森林限界には達していません。移住地拡大のため、(山の上の方にも広がっています)太陽が当たる日当たりのいい場所にある森は縮小し、野原や牧草地に変わっている場所もあります。このような現象は、特に盆地であったり川がある谷(といいうのでしょうか)がある場所で顕著で、森の縮小はかなりの進んでいます。そして狭い渓谷は、移住地や産業ちが密集しているので、川の水が少し汚染されているため、水力発電の可能性があります。 アルプス地方との社会的な違い   プレアルプス山岳地帯 は小さな盆地と山脈の麓に人口が密集しています。アルプス地方とは違い、谷(渓谷)だけではなく太陽の当たる場所や山

スロベニアの地理⑤ アルプス地方

スロベニアのアルプス地方 国土の2%という小さい面積でありながら、スロベニアにはアルプスがあります。この国で一番高い山である Trigrav ( トリグラウ )はこの地方に位置しており、スロベニアの国民的スポーツとも言えるスキー競技もこの地方で試合や練習が行われています。 日本人にとってアルプスって馴染みがないし、多くの観光客の方、特にツアーで来られる方はここを見逃しがちです。自然も雄大で、空気も澄んでいて、感動すること間違いなしなのです。 順を追って、この地方の特徴を記していきます。 アルプス地方には、スロベニアで一番高い ユリアンアルプス、カムニシュコ- サヴィンスケアルプス、カラヴァンケ という3つの 山脈から成り立っています。これの山脈の高さは 全て2000m以上 で森林限界、つまり高い木々が成長できない地域となっています。 ユリアンアルプス (Juljisje Alpe )  3つの山脈の中で最も広大なのはユリアンアルプスです。 2864m の高さで、スロベニアで一番高い山である トリグラウ はここに位置します。もちろんこれでだけではなく、他にクルン、プリソイニックなど美しい山がそびえています。 写真2ユリアンアルプス ユリアンアルプスの南東には、木々が生い茂った山々、 ポクリューカ(Pokljuka) 、 メジャクラ(Mežakla) 、 イェロヴィッツァ(Jelovica) があります。 ユリアンアルプスの西側には コリトニッツァ川 とともに ソチャ渓谷 があります。ボヴェッツという街にはソシュカ渓谷が広がっています。ソシュカ渓谷の上部はトレンタと呼ばれる場所で有名です。交通が良くなく放棄されていましたが、今が観光業がテコ入れをして、夏避暑地として訪れる人々が増えてきました。 写真3: 夏のボヒン湖 写真4;クランスカゴラと湖 ユリアンアルプスの南西部には、 ボヒン があります。小さく深い盆地があり、それは有名な氷河湖、 ボヒン湖 となります。このボヒン湖の源流は サヴァ・ボヒン川 です。サヴァ川はスロベニアで一番長い川で、クロアチア、ボスニア、を通りセルビアでダニューブ川となる川なのですが、その分流として、サヴァ・ボヒン川の他にサヴァ・ドリンカと

スロベニアの地理④ プリモルスカ地方 Primorski svet

前回に説明した 自然地理学的区分の地域 から、一つずつゆっくり自然や見所を説明したいきたいと思います。ディナルスカ地方に続き、今日は プリモルスカ地方 の説明をします。では以下に特徴を記していきます。 プリモルスカ地方の区分 プリモルスカ地方は、唯一自然地理学的区分と歴史的区分において名前が同じです。しかし、その領域は異なりますので注意が必要です。 写真1  地図を見ますと、オレンジと黄色の部分に分かれていますね。黄色は フリッシュ地域 、オレンジは カルスト地域 となります。フリッシュ(英語ではflysch)とは堆積した不浸透性の砂岩でできた広範囲な地層で、ヨーロッパのアルプス地方によく見られる地形と言われています。 カルスト地形はディナルスカ地方でも記した通り、石灰岩など不浸透性の岩からなる土地のこと。それでは順番にプリモルスカ地方を見ていきましょう。 気候 プリモルスカ地方の気候はスロベニア内部のそれとは異なります。まず第一に、温暖な気候が挙げられます。プリモルスカ地方の気候は、スロベニアの中でも一番晴れの日が多いです。したがって果物の栽培や観光発展にも適している地方と言えるでしょう。地中海性気候と似ている部分があるのですが、秋の降水量が多いという点で、地中海性気候とは全く同じではないと言えます。 晴れの日が多いということは羨ましい限りなのですが、それなりに問題はあります。Burja(ブーリャ)と言うものすごい強い風が問題点です。この風は冷たい風で、高い方のディナルスカ地方(Visoke dinarske planote)から 低い方のプリモルスカ地方へ吹きます。 最も風にさらされる場所では時速200Kmの速さで吹く風なので、危険ですし冬は過ごしにくいです。車が横転したり、森やオリーブの木々を折ってしまったり、屋根が飛んでしまうことだってあるのです。中には屋根の上に石を置いて被害を受けないように工夫しているんです。 2. 写真はブーリャで屋根が飛ばないように石を載せている家のず。   人口 スロベニアの他の地域と比べて、プリモルスカ地方はより昔から人が移住していました。しかし郊外や丘続きの場所では、移住地は狭く移住者も少ないです。過疎化や高齢化が目立ってきていますが、も

スロベニアの地理③:Dinarski Sevet - ディナルスカ地方

前回に説明した 自然地理学的区分の地域 から、一つずつゆっくり自然や見所を説明したいきたいと思います。今日は ディナルスカ地方 をテーマにいたします。 ディナルスカ地方は、スロベニアの南で東西に広がる地域でしたね。 この地域は、石灰岩や白雲岩が含まれている地域があるので、カルスト地形の特徴があります。 それでいて、 低い地域 と 高い地域 に分かれており、それぞれ Nizke dinarske planote と Visoke dinarske planote と呼ばれています。低い部分は薄緑色、高い部分は濃い緑で表されています。 以下にディナルスカ地方の特徴をいくつか述べていきます。 特徴① カルスト地形 このカルスト地形はディナルスカ地方のみにある現象ではないのですが、特にこの地方はこのカルスト地形の特徴が色濃くある地域です。 カルスト地形というのは、基本的に 石灰岩が化学的に溶解してできた地形 です。水が表面にとどまらず地下へ流れていくのです。水は浸透性の石、つまり 石灰岩 や小さな 白雲岩 をひび割れさせ、どんどん深さを作っていき、洞窟や鍾乳洞ができていくというわけです。 そのカルスト現象は表面と地下に分けることができます。 雨水や空気中の水は表面にとどまらず、地表にある二酸化炭素と混ざり、やがて炭酸を作り出します。 石灰岩などの溶解は、石の中にあるミネラルが溶け出していることを意味し、その後カルストの地下に Siga や 鍾乳石 として残るわけです。 このSigaは日本語で一言で言い表せないのですが、つまり化学的な堆積物でセメントでコーティングされたようなもので、石灰石にあるミネラルを取り出し、カルストの洞窟の壁にくっつています。 鍾乳石はこのSigaが成長した形で、細長い形をしています。二つを紹介します。 一つ目は天井から下がっているような形態の鍾乳石、 Stalaktit (英語で Stalactite )日本語では、 つらら石 と言われます。 https://sl.wikipedia.org/wiki/Stalaktit#/media/File:Stalactites_-_Treak_Cliff_Cavern.jpg 二つ目は Stalagmit (英語では Stalagmite

スロベニアの地理②:自然地理学的区分

今日はもう一方の自然地理学的区分について説明します。 この区分に基づくと、スロベニアは大きく Alpsle pograjne  (アルプス地方) Predalpske pokrajne  (プレッドアルプス地方) Dinarske pokrajne  (ディナルスカ地方) Primorske pokrajne  (プリモルスカ地方) Panonske pokrajne    (パノンスカ地方) のように、5つに分かれます。  では順番に地域毎の概要を見ていきましょう。 1. アルプス地方  地図の青い部分がアルプス地域です。スロベニアの北西部に位置し、1500メートルを超える山脈があり、森林限界といって高木が生息できない地域とされ、渓谷に囲まれています。高い山々は多くが石灰石でできているので、Visokogorski kras(日本語だと、高山にあるカルスト地形)とも呼ばれているんです。 ここにには、3つのアルプス、ユリアンアルプス(Julijske Alpe)、カラヴァンケ(Karavanke)、そしてカムニシュコーサヴィンスケアルプス(Kamniško-Savinske Aple)が位置しています。 http://www.modrijan.si/slv/content/search/(offset)/30?SearchText=dinarskokra%C5%A1ke+pokrajine&SubTreeArray=2 ユリアンアルプスには、スロベニアで一番高い山、トリグラウがあります。(2864m) とっても綺麗な場所なのですが、あまり居住者が少なく、経済的な発展はあまり見込めない地域かもしれません。しかし牛などの家畜を放牧する場所としては最適ですし、夏はハイキングやサイクリング、冬はスキーなどスポーツの場として人気のスポットです。  アルプス地方では、イェセニッツェ、ボヴェッツ、クランスカゴラが有名な街です。 ユリアンアルプスのマンガルトにて。  2. プレッドアルプス地方   ツェルクのブレゴシュにて。きちんと木が生えているのがわかりますね。    スロベニア語でpred(プレッド)は〜の前のという意味がありま

スロベニアの地理①:歴史的(伝統的)区分

スロベニアは20,273㎢と日本の四国ほどの面積で、ヨーロッパでは12番目に小さい国となっていますが、市町村などに分けると、なんと200程の地方自治体があります。 東北地方、近畿地方、などと 日本にも国を分ける地域名がありますね。 もちろんスロベニアにもありますが、面白いのは伝統的あるいは 歴史的 、そして 地理学的 に呼び名と区画が分かれていることです。 今日は歴史的区分についてお伝えします。 歴史的区分  スロベニアで日常的に使用されている区分は歴史的区分になります。例えば、「どこ出身?」と聞くと「〜地方出身です」と地方で出身を表すこともあるくらい。ニュースでもよく使用される区分です。その区分は以下のとおり主に6つに分かれています。 Gorenska (ゴレンスカ) Dolenska  (ドレンスカ) Notoranjska  (ノトランスカ) Štajerska  (シュタイェルスカ) Primorska  (プリモルスカ) Prekmurje  (プレクムリエ) 写真:Živimo v Sloveniji : Georgrafija za 8. razred osnovne šole の14pから. オーストリアの区分。現代はまた異なる区分になっています。 緑の部分、青い部分、ピンクの部分、また何も色がついていない文字がそれぞれ地図の場所になります。 この地域名は、ハプスブルク帝国、後のオーストリア=ハンガリー帝国が正式にスロベニアをこのように分けて呼んでいたことに由来しています。14世紀には、今日のスロベニアの領土はハプスブルク帝国に占領されてしまいました。その後に、区域が クラインスカ 、 シュタイェルスカ 、 コロシュカ 、 ゴリシュカ 、 イストラ 、 トリエステ (今はプリモルスカとなっていますが、今はトリエステはイタリア、イストリアの南部はクロアチアとなっています。領土が時代ごとに変わっていくのですが、今後記載していきますね。) と分類されました。プレクムルスカはハンガリー側の領土にあったんです。(複雑ですよねー) スロベニ人は地域別に、プリモルスカ人(primorci)、ゴレンスカ人 (gorenci)、シュタイェルスカ人(štajerci)と今でも言ったり

バルカンってどこ?

私のブログタイトルである、Almost All the Balkans ;)ときいて、「バルカンって何?」「一体どこのこと?」って思った人が多いと思います。しかし、明確な定義は学術的にも分かれている 地域です。現在では、地理的定義と歴史的定義があります。 地理的に言うと、サヴァ川から南, そしてアドリア海、エーゲ海、黒海に囲まれた地域がバルカンといわれています。よって、スロベニア(南部)、クロアチア、セルビア、ボスニア、マケドニア、ギリシャ,ブルガリア、モンテネグロがバルカンといえます。 しかし、歴史的な定義もあります。その場合は、オスマン帝国統治下にあった国がバルカンだとみなすので、スロベニアは除外され、ルーマニアがバルカン地域とみなされます。 Photo1 この明るい部分が地理的に定義されているバルカンといえます!!! そもろも、バルカンというのはトルコ語で、「樹木におおわれた山」という意味があり、バルカン地域は山がちな地域であるといえるのです。下に代表的な山脈の写真を載せました。位置関係など、上にのせた地図を照らし合わせてみてみてください。 写真はバルカン山脈です。別名スタラ・プラニナ山脈と言います。セルビアとブルガリアの国境からブルガリア側の黒海まで伸びています。なんとおよそ560kmもある山脈です。 Photo2 セルビアとブルガリアの国境にある場所からの眺め 下の写真はブルガリアに位置しているピリン山脈。 Photo3 ラズログ渓谷から見たピリン山脈 ブルガリアの南部からギリシャへ伸びているロドピ山脈。面白い名前ですね。 Photo4 ロドピ山脈 スロベニア、クロアチア、ボスニア、セルビア、アルバニア、にかけて広がっている、大変長い山脈です。 Photo5 ディナルアルプス こちらはピンドゥス山脈。アルバニア南部からギリシャ北部にかけて広がっている山脈です。およそ160kmの長さです。 Photo6 ピンドス山脈 下の写真はシャル山脈。 コソヴォの南部からマケドニア北部そしてアルバニアの北部にかけて広がっています。 Photo7 シャル山脈 とっても綺麗ですよね~。これらの山